水素の話 2011 5 15

書名 水素がわかる本
著者 小波 秀雄  工業調査会

 この本は、過去に何度も取り上げましたが、
「水素爆発」については、書いてこなかったと思いますので、
再度、取り上げることにしました。
 福島原子力発電所の事故では、建屋の上部が崩壊したのは、
「水素爆発があったとされる」と何度も報道され、
水素に対するイメージが悪化していくことが残念だと思っていました。
 さて、本題に入りましょう。
水素が爆発事故を起こしやすい理由としては、
「漏れやすい、燃焼限界の範囲が広い、着火しやすい」ということが、
よく言われるでしょう。
 その他に、水素脆性による設備材料の劣化もあるでしょう。
水素脆性の問題については、別の本の紹介の時に書いたと思います。
金属は水素を吸い込みやすい、あるいは水素は金属にもぐりこんでしまうという性質から、
金属自体の性能が劣化してしまうのです。
 昔は、戦艦の大砲を鉄で作る時に、鉄の中に、水素が入り込んで、
大砲の強度が落ちてしまうことに苦労したと聞いたことがあります。
 さて、本題に入ります。
この本によれば、
「水素は分子量が小さいために拡散速度が大きく、
また小さな隙間やシール材を通過して漏れやすい」ということがあるでしょう。
続けて引用します。
「水素が危険だとされている点の第一は、
『水素は最小点火エネルギーが非常に小さい』という点だ。
しかし、この考えについては異論が出されている」
 この本に掲載されている図は、
「水素と空気の混合気体で、最小点火エネルギーが、
混合比率に、どのように依存するかを表したものだ。
同時に、このグラフには、メタンについてのデータもプロットされている。
 図を見ると、水素が5%程度含まれているような混合気では、
メタンも水素も大差がないことがわかる。
 実際の事故では、漏れ出した水素に点火して爆発するケースが大半であって、
空気に水素が30%も含まれているような状況は、ほとんどないはずだ。
水素が軽くて非常に拡散しやすいという事実を考えても、このことは、うなづける。
 したがって、漏れた水素に火がつくという状況では、
比較的低濃度の条件が多いと思われる。
そういうケースでは、何も水素が特別危ないということにはならない」
 ちなみに、水素が燃えると、どうなるか。
この本によると、「目には見えない水素の炎」の章で、
「水素の炎は、ほとんど目に見えない。
液体水素エンジンで推進するロケットでは、炎は、ほとんど見えず、
代わりに大量の水蒸気が冷えて白い飛行機雲のような飛跡を残して飛んでいる。
一方、炭化水素系のガスが燃える時には、オレンジ色の炎や青い炎が観察される」
 原子力発電所の事故で、水素に対するイメージが悪くなったかもしれませんが、
水素エネルギー社会の推進も、がんばりましょう。
まずは、燃料電池自動車の推進でしょう。





















































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